2021年第92回アカデミー賞4部門獲得
韓国映画「パラサイト半地下の家族」
富豪夫婦が自宅ソファでくつろぐシーン
妻が夫に「時計回りに触って?」や「ドラッグ買って良い?」とささやきます。
おそらく、見た人のほとんどが
「んんん?どういう意味?」となったシーンであり
作中で最大の見どころの1つです。
そこでこの記事では、
・時計回りの意味を11視点で解説!
・ドラッグ発言についても考察!
作内に散りばめられた伏線や多くの謎があり、非常に深い映画でした~。
最後までゆっくりとご覧ください。
【パラサイト半地下の家族】時計回りの意味を解説!
僕は公開時、映画館で鑑賞しました。
「時計回り」は本当に衝撃的でヤバかった!
近年の映画史上に残るシーンの1つだと思います。
あらゆる意味で話題沸騰の「時計回り」
に込められた意味とはなんだったのでしょうか?
僕独自の11個の視点で徹底考察していきます!
①時計回りとはまさに生き地獄のようなシーン!
それでは、「時計回り」を振り返ってみます。
パク家の息子ダソンの誕生日にキャンプへ出かけた一家でしたが、大雨の為中止になります。無事に大豪邸へ帰ってきましたが、ダソンはキャンプが中止になったことに完全に機嫌を損ねてしまいました。
どうしても満足いかないダソンは、大雨の中、庭にテントを張り1人キャンプを始めます。
そんな息子の姿を、パク夫妻はリビングのソファから眺めていました。
だんだんと雰囲気が怪しくなり、そのうちダソンそっちのけで行為に及ぼうとします!!
その下には半地下一家が隠れていることも知らずに・・・
実はパク一家が旅行から帰宅した時に、実はキム一家は好き放題のどんちゃん騒ぎで遊んでいました。鬼の居ぬ間にというか、非常に面白いシーンでしたよね!羽のばしすぎだから笑
突然、パク一家が帰ってきてものすごいびっくりしたでしょうね笑
間一髪、机の下に隠れることができたて良かった!こっちまでドキドキしました。
実は、視聴者はそこからもう監督の思惑にハマっていたのかもしれませんね。
その後パク夫妻は、ソファで良い雰囲気になり、なにやら怪しい行為をゴニョゴニョし始め、その際に妻ヨンギョは「時計回りに・・・」や「ドラッグ買って」と夫ドンイクに言います。
いや~しかし逃げることもできず、富豪夫婦が眠りにつくまで、そこに隠れて息をひそめているしかなかった半地下一家にとっては、まさに生き地獄でした。
②時計回りは「早く終わってくれ!」という気持ちにさせるため?
「時計回りとは?」
ポン・ジュノ監督はかつてインタビューで聞かれた際にこうおしゃっていました。
「観客がこのシーンを見て、「早く終わってくれ!と思ってほしかった」
たしかに、気まずいシーンって時間長く感じますよね?
ソファの下で隠れている半地下一家達と同じような気持ちになってほしい!
そのような意味をこめて、あえてこのシーンを作ったということですね。
その思惑は大成功!だと思います笑
時計回りは友達や彼女と見るのでさえ、ちょっときつい・・・
家族と一緒に見るのなら最高に気まずいシーンになることは間違いありません!
※ポン・ジュノ監督の他の作品もすごいです!
③時計回りは父ギテクのターニングポイント?
またポン・ジュノ監督のインタビューの翻訳から監督は、時計回りのシーンのことをシナリオ執筆時から一番欠かせないシーンだと思っていたそうですね。
この映画は意図的にしろ、そうじゃなくても、他人の私生活を覗き見てしまい、そこに巻き込まれてしまうことで起こる悲劇を表現しているとおっしゃっています。
この「時計回り」は、家族に「偉大なパク社長に感謝の祈りを」なんて言っていた父ギテクが、本当に目の前で、かつ自分たち家族の前で、自分たちと同じような低俗で欲にまみれた富裕層の姿や言動を見せつけられ、パク夫妻から精神的に距離をおく重要なターニングポイントとなっています。
④時計回りは隠された暗示や伏線?
また、時計や時間という視点で「時計回り」の意味を考察すると、ストーリーに関しての隠された暗示、伏線ととらえることができて面白いです。
・時間は戻ることはない(人生での失敗はやり直せない)
このことは映画をラストまで観ると、強烈に感じます!
あの時なんで・・・ああしとけばとか、あれやらなかったら!とものすごく色々考えさせられるラストなので。時間は戻らない非情さを思いしらされます。だから、嘘偽りはダメなんですね苦笑
・何かへのカウントダウン?(このことが何かのきっかけとなった?)
今思えば、たしかにこの時計回りでのシーンが、後の大事件の決定的なスイッチの1つになったことは間違いないと思います。
夫妻の、匂いや貧富の差の発言が父親の怒りのトリガーになったのではと推測します。
考えれば考えるほど「時計回り」の意味って深いですよね~
⑤時計回りは貧富の格差?
不思議なことに、実は作中に「時計回り」のシーンがいくつも登場するんですね~
それぞれ紹介していきます。
<時計回りのシーン> |
・富豪邸へ登る階段が「時計回り」になっている。 |
・地下室のドアを開閉するときに、ギアを「時計回り」に回している。 |
そして逆に「反時計回り」のシーンも存在するのです!
<反時計回りのシーン> |
・元ハンマー投げの選手だったキム家の母・チュンスクが、庭で投げた回転方向が「反時計回り」 |
・キム一家が運転手食堂で食事をするとき、バイキング形式で並んでいる料理が「反時計回り」 |
・クライマックスで、ギテクがドンイクを刺殺し階段を「反時計回り」に駆け下りて逃亡する |
これらのシーンの描写をまとめて、落ち着いて考えてみると
・半地下一家などの貧困層に関するシーンは反時計回りとなっている
ように感じると思います。
「時計回り」は前に進む富裕層
落ちていく半地下一家は「反時計回り」という貧富の差や格差社会の比較描写の意味になっていると考えることができますね!
・仕事があり人生が前向き=時計回りの富裕層
・仕事がなく人生が後ろ向きな=反時計回りの半地下
じ~っくり細かくみてみると、もっとたくさんあるかもしれませんが、非常に興味深く面白い発見ですよね。
⑥陰陽道から時計回りを考察!
韓国では国旗「太極旗」に陰陽道の考えを取り入れているほど陰陽道が一般的です。
陰陽道から見る「時計回り」も考察していきます。
陰陽とは自然や社会の観察から作り上げられた概念で、自然界の様々なものが相反する陰と陽で分けることができ、陰と陽は常に動き、変化しながらお互いのバランスを保っているという考えです。
時計回りが「陰」 反時計回りが「陽」
・天地でいうと
天が「反時計回り」 地が「時計回り」
・攻守でいうと
反時計回りが「攻め」 時計回りが「守り」
つまり
・パク家の富裕層が→陰・地・守り
・キム家の半地下が→陽・天・攻め
ということになり、半地下のキム家の運気があがり、富裕層のパク家に攻める感じで取り入り、地位や名声が上がる一方、取り入れられた富裕層のパク家は運気が下がるという構図になっていると考えられます。
またラストでは「陰と陽は常に動き、変化しながらお互いのバランスを保っている」という陰陽の考えの通りに、一時は上がった半地下キム家の運気はどんぞこまで落ちていきます。
こう考えてストーリーをみてみると、非常によくあてはまりますよね!
⑦時計回りは興奮する?(韓国語から)
お隣韓国での表記と読みは、時計回り・右回り 시계 방향(セゲパンヒャン)となっています。
そして調べているうちに興味深い例文を見つけました。
「인간은 왜 그런지 시계 방향보다 시계 반대 방향에 안심감을 느낀다고 한다.」
人間は、何故か時計回りより反時計回りに安心感を感じるのだという。
という韓国語の例文なのですが、反時計周りは安心ということですよね。
つまり、韓国において時計回りは安心感ではない=興奮・ドキドキということになります!
このことを知ると、この時計回りシーンはさらに味わい深く感じることができませんか?
奥様のセリフはそれを知ってか知らずか、もっと興奮させて!?という気持ちだったのだと推測します人体の生理現象?からもこのシーンの意味は、ああ・・・と納得できるものではないでしょうか。
⑧パジャマから見る時計回り
この時計回りでは、2人はお揃いでシルクのパジャマを着ています。
このことも格差を表していると感じることの一つと言えます。
また、行為に及ぶ際に、よりセクシーな感じになりますよね。
映画『パラサイト』では画面に映るものすべてに貧富の格差が描きこまれていると話題。寝る時も貧しい家族は部屋着みたいな服を着て寝るが、金持ち夫婦はパジャマ…という話があったが、たしかにパジャマの価格帯、ルームウェアより高いな。生活に余裕がある人じゃないとパジャマを着ないのね。
— ジロウ (@jiro6663) January 18, 2020
⑨時計回りモノクロVer.の魅力
番外編として、「パラサイト半地下の家族モノクロVer.」が存在するのを知っていますでしょうか?
これがまた!なんともいえない魅力となっているんですね~カラーではないゆえに、逆に生生しく感じられます!
監督の表現したかった「匂い」の部分がよく分かるというか、見ているシーンを脳内で変換される時にその場からかもしだされているであろう、「匂い」や「肌感」が視聴者の五感にジワジワと訴えかけるような感じが僕はしました。
時計回りのシーンも、モノクロなのに妙に艶かしく、イケナイものを見ている感じがさらに濃くなります笑 昔の日活映画みたいな生生しい魅力です。
『パラサイト』のモノクロ版ポスター、カラー版のデザインを背後から見た構図になってて震えた。天才か pic.twitter.com/QTRT3LbgCH
— SYO(映画ライター) (@SyoCinema) July 12, 2020
『パラサイト』のモノクロ版をば。やっぱ面白いなぁこの映画。リスペクト!! pic.twitter.com/zNOir4NUGq
— るそん (@Lecon_3606) January 7, 2021
この作品が好きなら是非一度、モノクロVer.の視聴をオススメしますね!
⑩時計回りの音楽について
この「時計回り」は音楽にもこだわっています!
ポン・ジュノ監督は、この時計回りに流れる音楽の雰囲気は、「圧力炊飯器の圧力がどんどん増していくような感じで」と音楽監督にオーダーしたそうです。
最大の緊張感と緊迫感を感じてもらうために、そこまでこだわっていたということで、もう一度上の動画の後半部分をヘッドフォンで聴いてください。
ゾクゾクしますよ~
⑪時計回りは地上波で放送できたか?
2021年1月8日の金曜ロードショーにて、パラサイト半地下の家族は地上波で初放送されました。
放送前からこの「時計回り」がカットされるんじゃないか?とか、モザイクになるんじゃないか?とかピー音が入るんじゃないかとか、様々な心配がネット上で飛び交い、放送当日は気が気じゃなかったファンの人たちが多かったようです(僕もその1人です笑)
結果・・・無事にノーカットで何1つ変わることなく生放送されました!(よっしゃ!)
パラサイトの時計回りシーンをこんな平日夜に流すことでそれを机の下で気まずい思いをしながら感情を殺して見る貧乏家族の心情を視聴者に追体験させる金曜ロードショー…なんて手腕なんだ
— もつれら (@mtmtsf) January 8, 2021
今時、すごくないですか?時間帯が遅いからオッケーだったんですかね。
何はともあれ安心しました笑
監督の「時計回り」の意味はノーカットノー編集じゃないと伝わらないですから。
【パラサイト半地下の家族】ドラッグ発言について考察
また、時計回りシーンの際、妻ヨンギョの「ドラッグ買って・・・いい?」という衝撃的なセリフがありました。
その意味について、また韓国でのドラッグ事情も合わせて考察します。
ドラッグ買っての意味とは?
妻ヨンギョは行為が始まりそうになると、夫ドンイクに「ドラッグを買って」と言い出します。
結果的には、実際にドラッグを使用するシーンはありませんが。その発言にはびっくりです!
その前のシーンで、運転手をクビにする際、夫婦は運転手のことをドラッグでもやっていたのか?クスリはだめだ・・・と、つぶやいていたのですから!!
半地下などの貧困層も、運転手などの中流階級も、富豪も、結局は同じ欲や性質をもった人間なんだよということを意味し表現しているのだと思います。
いくらお金や地位があったって、人って根本は変わらないですよね。いきなり神や仏みたいになれるわけじゃない。
環境が同じなら、富豪夫婦だって半地下で暮らしていたかもしれないですしね・・・
韓国でのドラッグ事情
ここ数年で韓国では薬物が急速な浸透を見せているそうです。
韓国関税庁による麻薬関連の摘発件数と押収量は、14年の339件71.6kgに対して18年は660件426kg。
摘発者数は11年の9174人に対して、16年には1万4214人に増えています。18年には1万2613人に減ったものの、むしろ摘発逃れが増えた可能性が指摘されている状況ということです。
麻薬流通量の急増にともない、薬物のカジュアル化も進んでおり、摘発者に占める女性の比率は、14年の13.8%から18年には21.6%に拡大。
また20代の比率も12年の8.3%に対し、16年には13%を超えたといいます。これまで30代の男性を主な市場としていた薬物が、主婦や学生などを含むより幅広い層に浸透していることがわかります。
売買に用いられるものの1つが、メッセージを暗号化してやり取りするテレグラムです。
通信内容の秘匿性が高いとされ、薬物の売買など違法な取引に悪用されています。(テレグラムは、ロシア人起業家が立ち上げたTelegram Messenger LLPが提供するメッセンジャーアプリ)
Torネットワークなどに代表されるディープウェブはインターネットの一部ですが、やはり通信を暗号化するなどして高い秘匿性を確保するネットワーク領域を通じて売人が薬物を仕入れているそうです。
そしてもう1つ、決済にしばしば用いられるのがビットコイン。2018年5月に大麻吸引で執行猶予判決を受けた俳優のハン・ジュワンも、メッセンジャーアプリで売人とやり取りし、ビットコインで支払っていたことが明らかになっています。
暗号化されたやり取りと決済を通じて売買が成立すると、購入者はメッセンジャーアプリで街角に隠した薬物のありかだけを知ることができます。つまり通信や送金の記録はもちろん、物理的な接触もない「安全」な売買が可能になっているということです。
お隣、韓国でのITの普及が、ドラッグ売買を増やしていたという、恐るべき結果でした!
でもこれって恐らく、僕達が住んでいる日本でもおきていることなんですよね。芸能人の麻薬での逮捕も多くなりましたよね?
富裕層から一般庶民まで、薬物の流通が広がっていると考えて間違いなさそうです。
※パラサイト半地下の家族をより楽しむ記事
【パラサイト半地下の家族】時計回りのまとめ
ここまでの内容で、衝撃的で近年の映画史上に残るソファシーンの時計回りの意味やドラッグ発言についても考察してきました。
いや~本当に刺激的でしたね~笑
家族で視聴した人は、ソファの下で隠れている半地下一家のような気まずい思いをしたのは間違いないと思います!
以下まとめです。
<時計周りの意味について>
・見ている人に「早く終わってくれ」という気持ちにさせるため。
・父ギテクのパク夫妻への気持ちが変わるターニングポイント。
・時間に隠されたストーリーに関する暗示や伏線。
・時計回り=富裕層、反時計回り=貧困層で貧富の差を表現。
・陰陽道からの時計回り=ストーリーの構図を表している。
・時計回りはより興奮するため。
・時計回りモノクロバージョンも魅力!
・地上波では無事放送できた。
<ドラッグ発言の意味について>
・貧困層も富豪も結局は同じ欲や性質をもった人間ということを表現している。
・富裕層や若い女性のドラッグ所持者が増えてきている。
いや~映画って本当に面白い!
パラサイト半地下の家族は、久しぶりにそんな気持ちにさせてくれました。
多くの伏線や謎が散りばめられた素晴らしい映画でした。
この、パラサイト 半地下の家族を「いや~見逃しちゃった!」「ちょっとちょっともう一度!」という方は実はU-NEXTさんで無料視聴することができますので、簡単に説明させてください。
ポン・ジュノ監督や主演のソン・ガンホさんの他の作品も見ることができるので、まだ登録してない!というかたは是非おすすめします!
※ちなみにU-NEXTさんで見られるポン・ジュノ監督の作品は9つ
・殺人の追憶(ソン・ガンホ)
・母なる証明
・TOKIO!
・スノーピアサー
・グエムル(ソン・ガンホ主演)
・ほえる犬は噛まない
・海にかかる霧
・パラサイト半地下の家族(ソン・ガンホ)
・パラサイト半地下の家族モノクロVer.(ソン・ガンホ)
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この記事では時計回りについて誰よりも多く、僕独自の11個の視点で解説してきました。
皆さんのなかでの「時計回り」の解釈は、どれが一番近かったでしょうか?
※意見や感想などがあればコメント頂けると幸いです。
それでは最後までご覧いただき誠にありがとうございます!
感謝!
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