第92回アカデミー賞4部門を獲得した韓国映画「パラサイト半地下の家族」
ソファでくつろぐ夫婦団らんのシーンで、妻ヨンギョが「時計回りに・・」や「ドラッグ買って」と夫のパク社長にささやきます。
おそらく見たほとんどの人が、んんん?どういうこと?ってなったシーンであり、作中で最大の謎の1つだと思います。
そこでこの記事では、ソファシーンの時計回りの意味やドラッグ発言についても考察していきます!
映画内では様々な伏線や散りばめられた謎があり、本当に奥深い映画でした~
それでは、最後までゆっくりとご覧ください。
【パラサイト半地下の家族】ソファシーンの時計回りの意味
僕は実際に劇場でこの映画を鑑賞したのですが、本当に衝撃的で近年の映画史上に残るシーンの1つだなと思いました!
また、あらゆる意味で絶対物議を醸すソファシーンだな~と強く感じました。
話題沸騰の「時計回り」に込められた意味について徹底考察していきます!
時計回りとはまさに生き地獄のようなシーン!
もう一回ソファシーンを振り返ってみます。
パク家の息子ダソンの誕生日にキャンプへ出かけた一家でしたが、大雨の為中止になります。
無事に大豪邸へ帰ってきましたが、ダソンはキャンプが中止になったことに完全に機嫌を損ねてしまいました。
どうしても満足いかないダソンは、大雨の中、庭にテントを張り1人キャンプを始めます。
そんな息子の姿を、パク夫妻はリビングのソファから眺めていました。
だんだんと雰囲気が怪しくなり、そのうちダソンそっちのけで行為に及ぼうとします!!
その下には半地下一家が隠れていることも知らずに・・・
実はパク一家が旅行から帰宅した時に、実はキム一家は好き放題のどんちゃん騒ぎで遊んでいました。
鬼の居ぬ間にというか、非常に面白いシーンでしたよね!羽のばしすぎだから笑
突然、パク一家が帰ってきてものすごいびっくりしたでしょうね笑
間一髪、机の下に隠れることができたて良かった!こっちまでドキドキしました。
実は、視聴者はそこからもう監督の思惑にハマっていたのかもしれませんね。
その後パク夫妻は、ソファで良い雰囲気になり、なにやら怪しい行為をゴニョゴニョし始め、その際に妻ヨンギョは「時計周りに・・・」や「ドラッグ買って」と夫ドンイクに言います。
いや~しかし逃げることもできず、富豪夫婦が眠りにつくまでそこに隠れて息をひそめているしかなかった半地下一家にとっては、まさに生き地獄でしたね・・・。
時計回りは「早く終わってくれ!」という気持ちにさせるため?
ソファシーンの時計回りの意味とは、ポン・ジュノ監督はインタビューで聞かれた際に
「観客がこのシーンを見て、「早く終わってくれ!と思ってほしかった」と語っています。
たしかに、気まずいシーンって時間長く感じますよね?
ソファの下で隠れている半地下一家達と同じような気持ちになってほしい!
そのような意味をこめて、あえてこのシーンを作ったということですね。
その思惑は大成功!だと思います笑
時計回りは友達や彼女と見るのでさえ、ちょっときつい・・・
家族と一緒に見るのなら最高に気まずいシーンになることは間違いありません!
時計回りは父ギテクのターニングポイント?
「パラサイト」の例のベッドシーン、「時計回り」の意味を知りたくてポンジュノ監督のインタビューを翻訳しました!
結果「時計回り」は未解決ですが(汗)、内容は日本に出てないものなので読んでみてください。#パラサイト pic.twitter.com/PmQLIoX4vo— K-POPゆりこ@韓国トレンドPR (@kinoyuripeach86) March 1, 2020
またポン・ジュノ監督のインタビューの翻訳から、監督はこのシーンのことをシナリオ執筆時から一番欠かせないシーンだと思っていたそうですね。
この映画は意図的にしろ、そうじゃなくても、他人の私生活を覗き見てしまい、そこに巻き込まれてしまうことで起こる悲劇を表現しているとおっしゃっています。
この時計回りは、家族に「偉大なパク社長に感謝の祈りを」なんて言っていた父ギテクが、本当に目の前で、かつ自分たち家族の前で、自分たちと同じような低俗で欲にまみれた富裕層の姿や言動を見せつけられ、パク夫妻から精神的に距離をおく重要なターニングポイントとなっています。
時計回りは隠された暗示や伏線?
また、時計や時間という視点で「時計回り」の意味を考察すると、ストーリーに関しての隠された暗示、伏線ととらえることができて面白いです。
・時間は戻ることはない(人生での失敗はやり直せない)
これは映画をラストまで観ると、強烈に感じます!
あの時なんで・・・ああしとけばとか、あれやらなかったら!とものすごく色々考えさせられるラストなので。
時間は戻らない非情さを思いしらされます。だから嘘偽りはダメなんですね苦笑
・何かへのカウントダウン?(このことが何かのきっかけとなった?)
今思えば、たしかにこの時計回りでのシーンが、後の大事件の決定的なスイッチの1つになったことは間違いないと思います。
夫妻の、匂いや貧富の差の発言が父親の怒りのトリガーになったのではと推測します。
考えれば考えるほど「時計回り」の意味って深いですよね~
時計回りは貧富の格差?
不思議なことに、実は作中に「時計回り」のシーンがいくつも登場するんですね~
それぞれ紹介していきます。
<時計回りのシーン>
・富豪邸へ登る階段が「時計回り」になっている。
・地下室のドアを開閉するときもギアを「時計回り」に回す。
そして、対比させる目的でしょうか「反時計回り」のシーンも存在するのです!
<反時計回りのシーン>
・元ハンマー投げの選手だったキム家の母・チュンスクが、庭でそれを投げた回転方向が「反時計回り」
・キム一家が運転手食堂で食事をするとき、バイキング形式で並んだ料理が「反時計回り」
・クライマックスで、ギテクがドンイクを刺殺し階段を「反時計回り」に駆け下り逃亡するシーン
これらのシーンの描写をまとめて、落ち着いて考えてみると、
富裕層に関するシーンは時計回り、半地下一家などの貧困層に関するシーンは反時計回りとなっているように感じると思います。
「時計回り」は前に進む富裕層、落ちていく半地下一家は「反時計回り」という貧富の差や格差社会の比較描写の意味になっていると考えることができますね!
仕事があり、お金を稼いで人生を前にすすめるのは=時計回りに生きている富裕層
仕事がなく、戻せない過去にとらわれ人生が後ろ向きなのは=反時計回りに生きる半地下一家
細かくみてみると、もっとたくさんあるかもしれませんが、じっくり見てみる非常に興味深く面白いですね~
時計回りは興奮する?(韓国語から)
お隣韓国での表記と読みは、時計回り・右回り 시계 방향(セゲパンヒャン)となっています。
そして調べているうちに興味深い例文を見つけました。
「인간은 왜 그런지 시계 방향보다 시계 반대 방향에 안심감을 느낀다고 한다.」
人間は、何故か時計回りより反時計回りに安心感を感じるのだという。
という韓国語の例文なのですが、反時計周りは安心ということですよね。
つまり、韓国において時計回りは安心感ではない=興奮・ドキドキということになります!
このことを知ると、この時計回りシーンはさらに味わい深く感じることができませんか?
奥様のセリフはそれを知ってか知らずか、もっと興奮させて!?という気持ちだったのだと推測します
人体の生理現象?からもこのシーンの意味は、ああ・・・と納得できるものではないでしょうか。
時計回りモノクロVer.の魅力
番外編として、ただいまNetflixにて「パラサイト半地下の家族モノクロVer.」が見ることができるのを知っていますでしょうか?(上の写真怖いですね笑)
これがまた!なんともいえない魅力となっているんですね~
カラーではないゆえに、逆に生生しいんですね!
監督の表現したかった「匂い」の部分がよく分かるというか、見ているシーンを脳内で変換される時にその場からかもしだされているであろう、「匂い」や「肌感」が視聴者の五感にジワジワと訴えかけるような感じが僕はしました。
時計回りのシーンも、モノクロなのに妙に艶かしく、イケナイものを見ている感じがさらに濃くなります笑 昔の日活映画みたいな生生しい魅力にあふれています。
この作品が好きなら是非一度、モノクロVer.の視聴をオススメしますね!
時計回りは地上波で放送できたか?
2021年1月8日の金曜ロードショーにて、パラサイト半地下の家族は地上波で初放送されました。
放送前からこの「時計回り」がカットされるんじゃないか?とか、モザイクになるんじゃないか?とかピー音が入るんじゃないかとか、様々な心配がネット上で飛び交い、放送当日は気が気じゃなかったファンの人たちが多かったようです(僕もその1人です笑)
結果・・・無事にノーカットで何1つ変わることなく生放送されました!(よっしゃー!)
パラサイトの時計回りシーンをこんな平日夜に流すことでそれを机の下で気まずい思いをしながら感情を殺して見る貧乏家族の心情を視聴者に追体験させる金曜ロードショー…なんて手腕なんだ
— もつれら (@mtmtsf) January 8, 2021
今時、すごくないですか?時間帯が遅いからオッケーだったんですかね~
何はともあれ安心しました笑
監督の「時計回り」の意味はノーカットノー編集じゃないと伝わらないですからね。
【パラサイト半地下の家族】ドラッグ発言について考察
時計回りシーンの際、妻ヨンギョの「ドラッグ買って・・・いい?」という衝撃的なセリフがありました。
その意味について、また韓国でのドラッグ事情も合わせて考察します。
ドラッグ買っての意味とは?
そして妻ヨンギョは行為が始まりそうになると、夫ドンイクに「ドラッグを買って」と言い出します。
結果的には、実際にドラッグを使用するシーンはありませんが。
その発言にはびっくりです!
その前のシーンで運転手をクビにする際、夫婦は運転手のことをドラッグでもやっていたのか?クスリはだめだ・・・
と、つぶやいていたのですから!!
半地下などの貧困層も、運転手などの中流階級も、富豪も、結局は同じ欲や性質をもった人間なんだよということを意味し表現しているのだと思います。
いくらお金や地位があったって、人って根本は変わらないですよね。いきなり神や仏みたいになれるわけじゃない。
環境が同じなら、富豪夫婦だって半地下で暮らしていたかもしれないですしね・・・
韓国でのドラッグ事情
ここ数年で韓国では薬物が急速な浸透を見せているそうです。
韓国関税庁による麻薬関連の摘発件数と押収量は、14年の339件71.6kgに対して18年は660件426kg。摘発者数は11年の9174人に対して、16年には1万4214人に増えています。18年には1万2613人に減ったものの、むしろ摘発逃れが増えた可能性が指摘されている状況ということです。
麻薬流通量の急増にともない、薬物のカジュアル化も進んでおり、摘発者に占める女性の比率は、14年の13.8%から18年には21.6%に拡大。また20代の比率も12年の8.3%に対し、16年には13%を超えたという。これまで30代超の男性を主な市場としていた薬物が、主婦や学生などを含むより幅広い層に浸透していることがわかります。
売買に用いられるものの1つが、メッセージを暗号化してやり取りするテレグラムです。通信内容の秘匿性が高いとされる。そのため薬物の売買など違法な取引に悪用されているわけだ (テレグラムは、ロシア人起業家が立ち上げたTelegram Messenger LLPが提供するメッセンジャーアプリ)
Torネットワークなどに代表されるディープウェブはインターネットの一部だが、やはり通信を暗号化するなどして高い秘匿性を確保するネットワーク領域を通じて売人が薬物を仕入れているそうです。
そしてもう1つ、決済にしばしば用いられるのがビットコイン。2018年5月に大麻吸引で執行猶予判決を受けた俳優のハン・ジュワンも、メッセンジャーアプリで売人とやり取りし、ビットコインで支払っていたことが明らかになっています。
暗号化されたやり取りと決済を通じて売買が成立すると、購入者はメッセンジャーアプリで街角に隠した薬物のありかだけを知らされる。つまり通信や送金の記録はもちろん、物理的な接触もない「安全」な売買が可能になっているということです。
お隣、韓国でのITの普及が、ドラッグ売買を増やしていたという、恐るべき結果でした!
でもこれって僕達が住んでいる日本でも恐らくおきていたことなんですよね。芸能人の麻薬での逮捕も多くなりましたよね?富裕層の間に確実に起こっていることと考えて間違いなさそうです。
※パラサイト半地下の家族をより楽しめる参考記事もどうぞ
【パラサイト半地下の家族】時計回りのまとめ
ここまでの内容で、衝撃的で近年の映画史上に残るソファシーンの時計回りの意味やドラッグ発言についても考察してきました。
いや~本当に刺激的でした~笑
家族で視聴した人は、ソファの下で隠れている半地下一家のような気まずい思いをしたのは間違いないと思います!
以下まとめです。
<時計周りの意味について>
・見ている人に「早く終わってくれ」という気持ちにさせるため。
・父ギテクのパク夫妻への気持ちが変わるターニングポイント。
・時間に隠されたストーリーに関する暗示や伏線。
・時計回り=富裕層、反時計回り=貧困層で貧富の差を表現。
・時計回りはより興奮するため。
・時計回りはモノクロバージョンも魅力的!
・地上波では無事放送できた。
<ドラッグ発言の意味について>
・貧困層も富豪も結局は同じ欲や性質をもった人間ということを表現している。
・富裕層や若い女性のドラッグ所持者が増えてきている。
いや~本当に映画ってすばらしい!
パラサイト半地下の家族は、そんな気持ちにさせてくれました。
多くの伏線や謎が散りばめられた素晴らしい映画でした。
それでは、最後までご覧いただき誠にありがとうございます。
感謝!
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